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トリニティスタディとは?4%ルールの根拠と限界をわかりやすく解説

はじめにお読みください:本記事は過去の市場データに基づく情報提供であり、将来の運用成果を保証するものではありません。投資助言・勧誘ではなく、投資判断はご自身の責任で行ってください。

「引退したら、資産の4%ずつ取り崩せば30年もつ」——FIREや老後資金の話題で必ず出てくる「4%ルール」。この経験則の元になったのが、1998年に発表された通称トリニティスタディです。この記事では、研究が実際に何を検証したのか、その数字がどこまで信頼できるのか、そして日本の投資家が使うときの注意点を解説します。

目次

  1. 4%ルールとは何か
  2. 起源:ベンゲンの研究とトリニティスタディ
  3. トリニティスタディは何を検証したのか
  4. 最新データ(1928–2025年)ではどうなるか
  5. 4%ルールの限界と注意点
  6. 日本の投資家が使う場合
  7. まとめ

1. 4%ルールとは何か

4%ルールとは、次のような取り崩し方の経験則です。

引退時の資産の4%を初年度に取り崩す。翌年以降は物価上昇(インフレ)に合わせて取り崩し額を増やしていく。過去の米国市場の実績では、この方法で多くの場合30年間資産が尽きなかった。

ポイントは「毎年その時点の資産の4%」ではなく、「初年度に決めた金額を、物価に連動させながら取り崩し続ける」ことです。たとえば3,000万円で引退したら初年度は120万円。翌年に物価が2%上がったら122.4万円、という具合に生活水準を保つ前提で計算します。

逆算すると「年間支出の25倍の資産があれば引退できる」という、FIREでよく使われる「25倍ルール」になります(100 ÷ 4 = 25)。

2. 起源:ベンゲンの研究とトリニティスタディ

4%という数字を最初に示したのは、米国のファイナンシャルプランナー、ウィリアム・ベンゲンが1994年に発表した論文です。彼は米国の株式・債券の過去データを使い、「どの年に引退した人でも30年間資産が尽きなかった最大の取り崩し率」を調べ、およそ4%という結果を得ました。

これを学術的に拡張したのが、1998年に米トリニティ大学の3人の教授(Cooley, Hubbard & Walz)が発表した論文、通称トリニティスタディです。大学の名前から「トリニティスタディ」と呼ばれています。

3. トリニティスタディは何を検証したのか

研究の設計はシンプルです。

結果のうち最も引用されるのが「インフレ調整後4%・30年」のケースです。株式50:債券50のポートフォリオで成功率は95%、株式比率を上げるとさらに高い成功率が報告されました。一方、債券100%では成功率が大きく下がります。「株式をある程度持たないと、インフレに負けて長期の取り崩しに耐えられない」ことも、この研究の重要なメッセージです。

なお、元研究の債券は高格付け社債です。当サイトのツールは米10年国債を使っているため、数字は完全には一致しません(後述)。

4. 最新データ(1928–2025年)ではどうなるか

トリニティスタディのデータは1995年まで。その後にはITバブル崩壊(2000年)、リーマンショック(2008年)、コロナショック(2020年)などが起きています。最近のデータまで含めても4%ルールは成り立つのでしょうか。

当サイトの4%ルール検証ツールは、同じ考え方を米国1928〜2025年のデータ(株式=S&P500配当込、債券=米10年国債、物価=CPI)で再現しています。結果の一例:

取り崩し率(実質)期間配分(株:債)成功率
4%30年50:5092.8%
3%30年50:50100%

最新データまで含めても、4%・30年・50:50でおおむね9割強の成功率となり、元研究の傾向は維持されています。ただし100%ではありません。失敗するケースは主に1960年代後半〜70年代初頭の高インフレ期に引退した場合で、「いつ引退するか」で結果が大きく変わることがわかります。

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5. 4%ルールの限界と注意点

① 過去の米国市場の結果にすぎない

検証対象は20世紀以降の米国市場——世界で最も成績の良かった市場のひとつです。他の国の市場や将来の米国市場で同じ結果になる保証はありません。

② 税金・手数料を考慮していない

研究もこのサイトのツールも、売却時の税金(日本では約20%)や信託報酬などのコストを含みません。実際の手取りはその分少なくなります。

③ 「30年」で足りるとは限らない

トリニティスタディの想定は最長30年。40代でFIREする場合など40〜50年の取り崩しでは、同じ4%でも成功率は下がります。長期になるほど3%台への引き下げを検討する余地があります。

④ 引退直後の暴落に弱い(シークエンス・リスク)

平均リターンが同じでも、取り崩し初期に暴落が来ると資産の回復が難しくなります。リターンの「順番」のリスクは平均値には現れません。成功率92.8%の裏には、運悪く高インフレ・暴落期に引退して失敗したケースが実在します。

⑤ 機械的な取り崩しを続ける前提

研究は「暴落が来ても淡々と同額(実質)を取り崩し続ける」前提です。実際の人間は支出を柔軟に減らせる一方、パニックで売ってしまうこともあります。ルール通りに続けられるかは別問題です。

6. 日本の投資家が使う場合

日本から米国株や全世界株に投資して4%ルールを使う場合、追加で考慮すべき点があります。

これらを踏まえると、4%ルールは「精密な設計図」ではなく「必要資産の規模感をつかむ出発点」と捉えるのが適切です。

7. まとめ

出典・参考文献

  • Cooley, P. L., Hubbard, C. M., & Walz, D. T. (1998). "Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable." AAII Journal, 20(2), 16–21.(通称トリニティスタディ)
  • Bengen, W. P. (1994). "Determining Withdrawal Rates Using Historical Data." Journal of Financial Planning, 7(4), 171–180.
  • 株式・債券リターン: Damodaran Online(NYU Stern)
  • 物価上昇率(CPI): US Inflation Calculator(BLS CPIベース)
  • 成功率の数値: 当サイト「4%ルール検証ツール」による集計(1928–2025年)